社内試験や研修を実務に活かす効果的な方法

「定期的に昇進・昇格試験をしているけど、適正にできているのか不安」、「研修をしても、効果が実務で生かされていない」などとお悩みの人事担当の方は少なくないと思います。
これらは試験や研修を行うこと自体に問題があるのではなく、その内容が現場で求められる能力や実務に紐づいたものとなっていないために起こるミスマッチといえます。
ここでは過去の例をもとに、試験や研修を実務に生かす取り組みについてご説明します。
社内試験や研修の目的は?
通常、社内研修は、次の目的のために行われます。
● 新入社員や既存社員の能力の把握のため(新人研修や定期研修)
● 一定の職位における遂行能力があるかどうかの確認のため(昇進・昇格試験)
● 業務を行う上で必要となる知識や能力の獲得・確認のため(コンプライアンス研修、各種実務研修)
一方、社内試験はこれらの研修や業務を通じて、必要な知識・能力の獲得ができているかを確認するために行われますが、社内での筆記試験またはオンラインによる試験のいずれかの方法で行われるのが一般的です。
したがって、これらの理想的な流れを示すと以下のようになります。
① 実施の目的 ➡ ② 研 修 ➡ ③ 試 験 ➡ ④ 実務へのフィードバック
しかし、現実的には②もしくは③から④への流れがスムーズに構築されないことが多く、この点が試験や研修を形式的なものとしてしまっている要因となります。
そのため社内試験や研修を効果的なものとするには、ミスマッチの原因を探り、これを改善する必要がありますが、これを行う前にまず振り返ってみていただきたいのが、
「①の理念は本当に④の実務へのフィードバックを想定したものなのか?」
ということです。
例えば、ハラスメントに関する研修を行う目的は、弱い立場にある人の人権遵守のための知識や常識の習得にありますが、仮に受講者が規定の内容や概念を座学で学ぶだけでは、実務に対応したものとはいいがたいといえます。
なぜなら、それらの知識はあくまで試験でよい点を取るために覚えたものだからです。
そのため、いくらこのような研修を行っても、試験が終わるとともに覚えた知識が抜けていく、もしくは業務に生かされないということになります。
実務に紐づく社内試験・研修とは?
ではどうすればよいかといえば、実際に社内で生じた過去の事例や、これから起こる可能性があるケースを想定し
① 試験問題に、これらを取り入れた事例を出題し、その問題点の把握や対応力を問う
② 上記の点について、ロールプレイを受講者に行わせる
などの方法が効果的といえます。
具体的には、②の場合なら、事例に至ったまでの経緯をペーパーで説明した上で、必要な対応を何人かに演じてもらい、そのうえでどこに問題があったかを最後に講師から説明するなどがあります。
これらの結果をペーパーテストの結果に加味することにより、いざそのような事態が生じた場合の対応力がわかるとともに、また、このようにはじめからケースを明確にしておくことにより、会社が求める能力や理解の方向性に沿った知識の獲得につなげることができます。
そしてこの場合、70点を選択式問題や穴埋め問題とし、①については残りの30点を記述式にする、②ついてはロールプレイの結果を加点にするなどが考えられます。なお、②については、必ずしもペーパーテストと同時に行う必要はなく、時間や業務の都合に合わせて別に行ってもよいでしょう。
たとえば、社内のパワハラに悩んでいる会社であれば、次のような問題の出題が考えられます。
問題例)
最近、当社の●●部の課長であるAは、異動によりはじめてその業務を行うBに対して、現状よりも少し高いレベルの業務を任せたいという意思で、十分な教育を行わないまま到応ができないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対し厳しく叱責した。 このようなケースにおいて、Aの行為はパワハラとなるか? また、パワハラとなる場合、具体的にどの点が問題なのかとどのような対応をすべきであったかを記載せよ。 |
回答例)
パワハラに該当する。 厚生労働省「職場におけるハラスメント」によれば、過大な要求があった場合でもそれが労働者を育成するために現状よりも少し高いレベルの業務を任せることは違法ではないとされる。 しかしAは、それとともに、はじめてその業務を行うBに対して、十分な教育を行わないまま到応ができないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対し厳しく叱責したことはパワハラに該当する。。 |
なお、現在何らかの作業をOJTで行っているならば、その結果をペーパーテストの結果に組み込むというのも効果的です。
確かに、座学的な知識は必要ですが、それだけをあれもこれもと試験に取り入れても、結局は広く薄い総花的なものとなってしまい、実際の業務には活かしにくいものとなってしまいます。
そのため、重要なのは「会社が具体的に何を学ばせたいのか?」をはじめに明確にすることです。
そのためには、会社が学ばせたいことのビジョンや目的をしっかりと作り上げたうえで、それに沿った研修を行い、さらに試験内容に反映させるというプロセスが不可欠となります。
テストビジネスでは、専門的な知識だけでなく、「どうすれば試験や研修を実務に生かせるのか?」という観点からの問題作成をサポートしています。
もし、現在の試験や研修が十分に活かされていないとお考えの場合は、ぜひ一度お問い合わせください。
