効果の出る社内研修計画の作り方の手順

研修は、ただ多くの項目をあれこれと詰め込めるのではなく、はじめに求めるアウトプットを明確にし、その実現のためにどのような手法が有効かという視点で考えることで、おのずと必要な方法や講義の内容を明確にすることができます。
社内の研修計画は「アウトプット」重視で!
研修計画の4つの目的
研修計画では、「なぜ」「誰に」「何を」「どうやって」という目的の設定が重要となります。
これは間違えてしまうと、目指したい目標とその方法との間に、大きなギャップを生ずることとなってしまいます。
なぜ | 会社が求める知識等の習得、共通理解の形成、技術力の底上げ |
誰の | 経営者、全社員、パート、特定の部署、チーム |
何を | 会社の理念、就業規則、関係法令、コンプライアンス、ハラスメント |
どうやって | 集合研修、オンライン研修、ロールプレイ |
いずれについても、受講者が積極的に学び、飽きることなく研修に参加できるようにするためには、社内研修や試験問題作成の設計段階から工夫をする必要があります。
アウトプット型研修とは
その際の最大のポイントは、「研修等の知識や成果をアウトプットできるものとなっているか?」ということです。
知識を詰め込むだけの研修では、時間とともに忘れやすいだけでなく、実際の仕事に生かすことも難しくなります。
例えば、次のような例があります。
ある会社では、全社的なコンプライアンス意識を高めるために社内研修を行い、後日、その理解度を図るため確認テストを行いました。
参加者は皆さん真面目に受講し、研修後のテストの平均点も高く、研修担当者も満足する結果となりました。
しかし、その研修やテストの内容は、単に法令などの知識を覚えさせるものであったため、本来、求められるべき「自社におけるコンプライアンスとはどのようなものか?」や「具体的にどのように動くべきか?」については理解されないままとなってしまいました。
このように研修や社内試験を行う場合には、形式的な内容ではなく、「なぜ、それが必要なのか?」の目的や「業務でどう対応するのか?」というアウトプットを意識したものとしなければ、本当に理解し、役だつものとはなりません。
アウトプット研修のために必要なアクション
研修で学んだ知識を業務でアウトプットできるようにするためには、研修について次のような設計や仕組みをしておくがことが重要となります。
研修目的の設定
効果的で適切な研修を行うためには、「なぜ、それを行うのか?」という目的が明確になっていなければなりません。
また、その目的は「どうやって、アウトプットするのか?」という、研修後の行動と紐づいたものとなっている必要があります。
会社が研修を行う目的としては、次のようなものが考えられます。
● 会社の理念を全社員に理解、共感してもらいたい ● 売上げを上げるためのマインドを学ばせたい ● コンプライアンスを理解させたい ● 会社の求める技術要求を満たせるようにしたい ● 優秀な人材を獲得したい |
そしてそれぞれの目的に応じたアウトプットは、次のものとなります。
研修の目的 | 求めるアウトプット |
会社理念の理解や共感 | 業務全般において臨むべき対応や考え方ができる |
売上げ改善のマインド | 販売計画の立て方や効果的な考え方の醸成 |
コンプライアンスの理解 | 不祥事の防止と根絶、相互理解の促進 |
技術力のアップ | 受注の拡大や新製品の開発、不良品発生率の低下 |
このように研修を行う目的にはさまざまなものがあり、また、同じ目的であっても最終的に得られるアウトプットの内容が異なります。
そのため、研修を行うに当たっては、「なぜ、するのか?」という目的は最も重要なものとなりまが、それと同じく、「それによって、何を得たいのか?」というアウトプットについても併せて考えないと、目的と結果がずれたものとなってしまいます。
対象者の設定
研修の目的やそれにもとづくアウトラインが設計のできたら、次に考えるのが「研修の対象」です。
通常、研修の対象者の選定は「職位や職種により選ぶ」、「個人の属性や能力により選ぶ」という2つがあります。
職位や職種により選ぶ
新人研修 | ビジネスマナー・コンプライアンス・社内規則 |
中級者研修 | リーダーシップ・チーム推進・法令等理解力 |
管理職研修 | 人材開発・管理能力・財務能力育成・事業計画作成 |
個人の属性や能力により選ぶ
プロジェクトリーダー育成・営業力育成、法務や財務担当者育成など
前者は社内における特定の層を対象としたものであるのに対し、後者は個別・限定的な目的に携わる方を対象としたものとなります。そのため、一人が両方の研修に参加することもあり得ます。
研修を効果的かつ有意義なものとするためには、参加者の意識やレベルがある程度揃っていることが望ましいといえます。
いくらチームリーダーになりたいからといって、入社早々の社員を参加させるわけにはいかないというのはご理解いただけると思います。
ある程度の参加者の意識やレベルが揃っていないと、どの程度の研修をすべきなのかがわからないだけでなく、研修後の効果にも大きな開きができてしまいます。
● 参加者のレベルのばらつきが大きい → 研修レベルの設定が困難、研修後の理解度の差
● 参加者の意識のばらつきが大きい → 受講態度にムラ、積極性にムラ
そのため、研修の受講者の選定においては、職位や職種、本人の希望などをベースとしつつも、ある程度はレベルや意欲によるふるい分けも必要となります。
研修の方法の決定
研修は、その実施形式により「集合研修」と「オンライン研修」の2つに大別できますが、その中身によりさらに3つに分けることができます。
【集合研修】
会社や貸会議室などを利用して、対象者をリアルに参加させて行う研修
【オンライン研修】
zoomなどのアプリを利用して、在宅または現場からオンラインで参加させる研修
集合研修とオンライン研修では、以下のようなメリット・デメリットがあります。
メリット | デメリット | |
集合研修 | ・緊張感のある講義となりやすい ・受講者のリアルな反応がわかる柔軟に 運営がしやすい ・受講者同士のコミュニケーションが生 まれる ・作業やロールプレイの説明に向いている | ・場所や人数に制約がある ・会場や設備の準備が必要 ・会場のレンタル料や受講者の交 通費などがかかる ・開催日程が調整しずらい |
オンライン | ・場所や人数を選ばずに参加できる ・移動時間が不要会場や設備の準備が不要 ・研修にかかるコストを抑えられる | ・受講者の熱意が低くなりやすい ・ネットワーク環境の整備が必要 ・トラブルにすぐに対応しにくいに ・受講者同士の交流が生まれにくい ・作業やロールプレイの説明に向かない |
したがって、人数規模や予算、オンライン体制の構築度にもよりますが、以下のような使い分けがよいでしょう。
実施に向いている会社 | 実施に向いている研修 | |
集合 | ある程度の予算がある 作業やロールプレイが必要な内容 参加者が多くない | 新入社員研修 昇進・昇格研修技術職向け研修 |
オンライン | 予算が少ない 文書や画像が中心の内容 参加者が多い | リーダー研修 理念研修 知識の習得を目的とした内容 |
アウトプットの設定
研修方法までが明確になったら、次は「どのようにアウトプットするか?」を決定します。
研修の手法にはいくつかの種類がありますが、対象者やアウトプットしたい内容に応じて組み合わせて行うとさらに効果が得やすいものとなります。
対 象 | 求めるアウトプット | 研修の方式 | 研修の内容 |
新人 | ビジネスマナーの習得 | 集合研修 | テキストによる講義中心 実際の場面を想定した対応力の育成(ケース問題) |
課長 | チームマネジメントの管理力育成 | オンライン | マネジメントの基礎学習想定問題に関する討議 |
営業 | 提案営業力の強化 | 集合研修 | 成功事例の共有 アポイントや提案営業に関するロールプレイ |
漫然とマナー研修やマネジメント研修とするのではなく、上記のようにはじめに求めるアウトプットを明確にし、その実現のためにどのような手法が有効かという視点で考えることで、必要な方法や講義の内容を明確にすることができます。
研修成果の確認
最後に研修成果の確認をします。
成果の確認は、どのような目的で、どのような研修を行ったかに応じて、最適なものを実施するようにします。
例えば、新人のマナー研修であれば、後日にその内容の振り返りとしてペーパーテストを行うというのでもよいですが、訪問先でのいくつかの場面を想定し、研修担当者が相手となってロールプレイを行うなどすると、本当に研修の内容が身についているかを確認できます。
ロールプレイの想定ケース
【新人研修】 ● 電話の取次をした場合の正しい対応ができているか? ● 上司へ正しい報告書が書けているか? ● 客先での自己紹介会話の展開ができているか? 【営業職研修】 ● 成功事例を正しく理解できているかについてのテストの実施 ● 自身が考えた営業方法等に関するプレゼンテーションの実施 ● チーム内成功者による成功体験やノウハウに関する発表会 |
以上のように研修は、明確な目標とそれに紐づいたアウトプットをイメージして行うことが重要であり、これらがなく場当たり的に行っても得られるものは多くありません。
また、あらかじめこれらをはっきりさせておくことで、「なぜ、その研修が必要なのか?」というビジョンを参加者に伝えることができるため、受講者のモチベーションのアップにもつながります。
さらに研修後の効果測定についても、当初に設定した目標やアウトプットに沿ったもので行うことができるため、正しい評価がしやすいとともに、効果が十分に出ていない場合の対策も立てやすくなります。
まとめ
どのような形であれ、社内研修で重要なのは、実施側の意思や目標が参加者にしっかりと伝わり、「なぜその研修を受けなければならないのか?」、「その研修で得られるものは何か?」が共有されることです。
また、研修計画の作成をする際には、上記の「研修目標の設定」~「研修成果の確認」までのステップを踏まえつつも、さらにこれを効果的なものとするために、まずは経営者が自ら「目的とアウトプットは何か?」をしっかり考える必要があります。
テストビジネスでは、クライアントさまのご希望の書籍や資料からの問題作成の他、出題形式、難易度などについても柔軟に対応いたします。
また、試験を受けられる社員さま等の理解度を深め、実務に活かせる研修も行っています。
企業の社内問題の作成についてご質問等がある場合は、お気軽にご相談ください。
