「事業内スキルアップ助成金」(令和6年度)の使える研修について

「従業員に研修を受けさせたいが、資金が足りない」とお悩みの中小企業の経営者の方は多いと思います。
そのような方におすすめしたいのが「事業内スキルアップ助成金」です。
この助成金を上手に活用することで、集合研修やオンライン研修にかかる経費につき最大150万円の助成を受けることができます。
しかし、研修の方法や種類によっては、対象とならないものもあるため、まずば要件をよく理解し、「自分の場合には使えるのか?」を確認する必要があります。
この記事では、「事業内スキルアップ助成金」の要件や支給額の他、この助成金が利用できないケースについても解説いたします。
助成額および限度額
「事業内スキルアップ助成金」(以下、本助成金)の助成額と限度額は以下の通りです。
助成額
助成対象受講者数 ✖ 研修時間数 ✖ 760 円
助成限度額
本助成金の上限額は、事業外スキルアップ助成金とあわせて、1申請企業等あたり 150 万円です。
また、上限額に達するまで複数回の研修について申請することが可能です。
したがって、30人の受講生について30時間の研修を行った場合には、684,000円の助成を受けることができます。
なお、通常の助成金では一定の「助成率」が定められているため、支払った経費の全額が助成されるわけではありません。
そのため、仮に助成率が3分の2となっている場合は、60万円の経費がかかっても、そのうちその3分の2相当の40万円しか助成されないこととなります。
しかし、この助成金は通常のものとは異なり、助成率が100%であるため、適正に利用すれば支払った経費全額の助成を受けることができます。
利用できる企業とできない企業
本助成金は、一般的な企業であれば、利用することができます。
ただし、常時利用する従業員が、小売業・飲食業については50人、サービス・卸売業については100人以下である必要があります。
業種分類 | 資本金の額又は出資総額 | 常時使用する従業員数 |
---|---|---|
小売業・飲食業 | 5,000 万円以下 | 50 人以下 |
サービス業 | 5,000 万円以下 | 100 人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100 人以下 |
その他の業種 | 3億円以下 | 300 人以下 |
また、出資額や役員等の関係で大会社とみなされる企業(みなし大会社)も利用することができません。
利用のための条件
本助成金を申請するには、以下の要件他を満たしていなければなりません。
(1)都内に本社又は主たる事業所(支店・営業所等)があること
(2)都税の未納付がないこと
(3)過去5年間に重大な法令違反等がないこと
※脱税により重加算税が課されたこと等を含む
(4)労働関係法令について、賃金や労働時間等に関する違反がないこと
(5)風俗営業、性風俗関連特殊営業等の事業を行っていないこと
(6)連鎖販売取引、霊感商法などの業態を営んでいないこと
(7)暴力団に該当しないこと
(8)代表者、役員、従業員等に暴力団関係者に該当する者がいないこと
(9)過去5年間に不正の手段等による交付決定の取消しがないこと
提出期限
提出期限は、紙申請の場合と電子申請の場合でやや異なります。
申請期間
① 紙申請の場合
研修開始予定日の1か月前(当日消印有効)まで
② 電子申請の場合
研修開始予定日の1か月前(当日 23 時 59 分)まで
交付申請書受付期間
令和6年3月1日から令和7年2月 28 日まで
助成の対象となる研修
本制度による助成を受けられる研修は、以下の要件をすべて満たすのものに限られます。
(1)申請企業等の従業員を対象として計画する研修であること (2)集合研修(同時かつ双方向で行われるオンライン研修を含む)であること (3)受講者の職務に必要となる専門的な技能・知識の習得・向上又は専門的な資格の取得を目的とする研修であること (4)専門的な技能・知識を有する指導員、講師により行われること (5)通常の業務と区別できるOFF-JTであること |
「集合研修」とは、受講者が所定の時間に一斉に受講する研修のことをいいます。また、「 同時かつ双方向で行われるオンライン研修」とは、オンライン会議システム等を利用し、受講者が所定の時間に一斉に受講する研修のことをいいます。
これらの要件は一部を満たすだけではダメで、すべて満たしていることが必要となります。
そのため、「受講者がバラバラに参加する研修」や「職務に関係のない内容の研修」、「専門的な知識や資格のない社員により行われる研修」、「通常業務の中で行われる研修」などは助成の対象外となります。
助成の対象とならない研修の例
以下のような研修は、本助成金の対象となりません。
① 通信(添削方式)によるもの ②「 一般的なビジネスマナー、職場内コミュニケーション など」のように、社会人として共通して必要な知識を習得するもの ③ 「日常会話程度の語学」など趣味・教養を身につけることを目的とするもの ④ 「経営改善の指導、業務連絡会、成果発表会、マニュアル作成」など通常の業務に付随する内容のもの ⑤「 見学会、研究会」など研修とはみなせないもの ⑥「特別教育(労働安全衛生法第 59 条)」など教育等の実施が法令等で義務付けされているもの ⑦ 「経営理念の浸透、従業員の意識改革」など技能・知識の習得を目的としていないもの ⑧適性検査や試験問題のみで構成されているもの ⑨ 資格試験(単独で受験して資格を得られるもの) ⑩ 「あん摩マッサージ指圧、柔道整復、整体、カイロプラクティック」など医業行為又は医業類似行為を行うもの ⑪その他、公的資金の助成を受ける研修として適切でないもの |
その他の注意点
本助成金を受給するには、その他に以下のような要件を満たしていることや注意点があります。
その他の要件
①受講対象者は、従業員で、常時勤務する事業所の所在地が都内である者、研修ごとに総研修時間数の8割以上の者である必要があります。
②出席状況を毎回確認する他、一研修につき研修風景の写真を撮影(オンラインの場合はスクリーンショット)して提出する必要があります。
③研修終了後2ヶ月以内に報告書を提出する必要があります。
申請の注意点
①研修を中止した場合でも、実績報告書の提出が必要となります。
②助成される額は必ずしもかかった費用の全額ではなく、審査で認められた額となります。
③研修は、交付決定がされた後に行われたものに限ります。そのため、その前に実施したものは対象外となります。
④助成金の申請から助成金の振り込みがされるまでには、研修の長さにもよりますが、おおむね6ヶ月程度の時間がかかります。
⑤研修にかかる費用は、企業が全額を先払いし、その後に助成金が支給されるという流れとなるため、その間の資金繰りに問題のない財務力が必要となります。
⑤偽りその他不正の手段により助成金の交付を受けたときは、助成金の返還を求められる他、刑事罰が適用される場合もあります。
まとめ
「事業内スキルアップ助成金」は、都内に本社又は主たる事業所がある中小企業が、社内で集合研修(一定のオンライン研修を含む)を実施したときに受給できる制度で、最大150万円に達するまで何回でも利用できます。
しかし、その研修の内容は業務に関するものに限られ、 通信(添削方式)や 一般的なビジネスマナー、職場内コミュニケーション研修、 経営改善の指導等に関するものなどは対象とならないことに注意してください。
また、本助成金の利用にあたっては、交付決定前の研修には適用されない、研修費用を立替払いする必要があるなどにも気をつける必要があります。
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